
【クラブ取材】「サードプレイス」で育つ逞しさ。クラブテアトロの「一生サッカーを楽しむ」哲学
Junichi FUKUDA
SportGraphWorks
神奈川県横浜市都筑区を拠点に活動する「クラブテアトロ」。2025年に関東U-15サッカーリーグ2部への昇格を果たし、強豪ひしめく舞台で戦いを見せています。取材に訪れたこの日、チームは強い相手に対して必死に食らいつき、引き分けで価値ある勝ち点1を獲得して関東2部残留を確定させました。自前の「テアトロスタジアム」を拠点に、なぜ多くの卒団生が強豪校で重宝され、息の長い成長を遂げるのか。クラブの立ち上げから関わる代表の岩本大輝氏に、クラブの歴史や独自の育成論、そして理念である「人生の第三の場所」への想いを伺いました。

【チーム基本概要】
クラブ名:クラブテアトロ
設立:2004年
活動地域:神奈川県横浜市都筑区
主な練習会場:テアトロスタジアム
対象:U-13〜U-15(所属選手:77名/1学年25名程度)
活動時間:平日18:00〜21:00の間、土日
所属リーグ:関東U-15サッカーリーグ2部
主な戦績:2026年度 クラブユース選手権関東大会ベスト32/2026年度 JCYインターシティトリムカップ15位/2026年度 関東U-15サッカーリーグ2部
指導体制:スタッフ12名(JFA公認B級ライセンス保有者 ほか)

熱くなれる場所に身を置きたい。20歳で引き継いだクラブの原点
——本日はよろしくお願いします。まず、岩本代表がクラブテアトロに関わるようになった経緯からお聞かせいただけますか?
岩本代表:よろしくお願いします。僕が19歳の時にクラブが立ち上がり、その1年目から監督をやっていたのですが、2年目くらいにクラブを畳むという話が出たんです。それで「だったら僕がやります」と言って、20歳の時に引き継ぎました。今年で23年目になります。
——当時は現役選手を引退して指導者を始められたそうですが、当時の心境はいかがでしたか?
岩本代表:引退して指導者を始めるとなった時は、深く考えず「熱くなれる場所に常に身を置いていたい」という気持ちでした。もともと教員を目指していたこともあって、子どもたちに関わる指導者の道は自分にフィットしていたのかなと思います。

必死に食らいついて掴んだ残留。「勝負を決める力」の差と手応え
——今日の試合を引き分けで終え、見事に関東リーグ2部での残留が確定しました。改めて残留を決めた今のお気持ちと、今年初めて挑んだ関東リーグ全体の感想を教えてください。
岩本代表:残留が決まって本当によかったです。今日の試合も相手が強かったので必死に食らいついていく展開になりました。今年初めて戦った関東リーグ全体を通した印象としては、レベルが高くチャレンジャーとして挑む試合の連続でした。ただ、僕らがこれまで戦ってきた神奈川県1部リーグのレベルも非常に高いので、個々の局面自体にそこまで極端な差があるわけではないと感じています。
ただ、勝負を決めるチームとしてのたくましさや、個人の力の部分では、関東リーグのチームから自分たちの甘さを突きつけられる場面が多かったです。選手たちもそれを知りながら、リーグ戦を通して成長してくれたと思います。

狭い局面での「打開力」をつけてから広げる
——ホームページにある「攻撃の優先順位はピッチを広げることではなく、ゴールへの最短距離」という考え方について、日頃のトレーニングではどう落とし込んでいるのでしょうか?
岩本代表:うちは自前の「テアトロスタジアム」(フットサルコートサイズ)で練習していることもあり、少人数でのボール回しを大切にしています。ただ回すのではなく、それをどうゲームに繋げるか、ボールの置きどころや駆け引き、局面を打開するスキルを狭いところで身につけさせています。
——ドリル練習のようなものは行うのでしょうか?
岩本代表:ドリル練習は一切やりません。必ずゴールがあって、人がいて、スペースがある対戦形式の中でやります。いきなりピッチを広げた中に入ってしまうと、個人の打開力が身についていないのに派手なことばかりになってしまう。まずは小さい局面での打開力をつけてから広げていく順序を大切にしています。

挨拶は当たり前。「モラル・ユーモア・コミュニケーション」の真意
——人間教育の部分で、モラルやコミュニケーションに加えて「ユーモア」を挙げられているのが印象的です。
岩本代表:うちは学校でも家庭でもないので、行儀良くするようなことは他で学べばいいという考えもあります。挨拶や片付けをするのは当たり前で、僕らが教えていきたい人間性はそれだけじゃないと思っています。 大切なのは、その場でちょっとした笑いが生まれるような感覚や感性です。人を傷つけないモラルは前提ですが、ピシッと並ばせるのではなく、楽しもう、笑っていこうという空気感をサッカーを通じて持てる子になってほしいと考えています。
——「街クラブにおけるトップレベル」というお話もありました。J下部組織との違いについてはどうお考えですか?
岩本代表:J下部組織はプロを育てるところですが、バックボーンのない僕らのような地域に根ざした街クラブに求められる役割はまた違うと思っています。街クラブとしてのトップレベルを目指すことに存在価値がありますし、「街クラブとして負けていないぞ」という思いで子どもたちに寄り添っていきたいです。

学校でも家庭でもない。「人生の第三の場所」
——事前のアンケートに掲載されていた「人生の第三の場所」という言葉の意味を教えてください。
岩本代表:学校でも家庭でも教えてもらえないことを学べる場所であり、学校や家で上手くいかなくても「ここがあるよ」と思えること。それが僕らのクラブの全てだと思っています。 僕らは勝負の世界にいるので100%勝ちを目指しますし、勝ちを目指すからこそ成長やゲームとしての面白さがあります。でも、勝った負けただけで評価をしてしまうのはナンセンスです。子どもたちに寄り添い、居場所としてあり続けることが目標です。

痒い所に手が届く。「完成を急がない」育成
——進学先の高校などからは、テアトロ出身の選手はどのように評価されていますか?
岩本代表:ありがたいことに、「サッカーをよく分かっている」「一人はチームにいてほしい、痒い所に手が届く選手」と言っていただけることが多いです。ドーンと目立つ選手はいなくても、チームの足りない部分を埋められるような個人スキルとサッカー理解度を評価していただいているのかなと思います。

——最後に、岩本代表が描くこれからのクラブの未来像について教えてください。
岩本代表:実は、過度な野心みたいなものはあまりないんです(笑)。今こうして存在できていること自体が幸せですし、自分たちのスタイルのままであり続けることが大切だと思っています。 フィジカルだけに頼って若いうちに完成させてしまうのではなく、10年後、20年後に大人になっても「一生涯サッカーを楽しめるスキルとマインド」を持った選手になってほしい。おじいちゃんになってもサッカーが上手い奴らがうちからいっぱい生まれたら、それが一つの成功かなと思っています。

【取材を終えて】 関東リーグ2部残留を引き分けで必死に掴み取った直後の取材でありながら、語られたのは「完成を急がない」「居場所であり続ける」という言葉でした。「第三の場所」という安心感があるからこそ、子どもたちは勝負の舞台で失敗を恐れずに挑戦し、サッカーの本質を学んでいく。クラブテアトロの強さの根底には、子どもたちへの温かい眼差しがありました。





【クラブインフォメーション・進路案内】
■ 主なプロ輩出実績 ・奈良坂 巧(町田ゼルビア〜カマタマーレ讃岐〜ギラヴァンツ北九州)ほか
■ 卒団生の主な進学・進路実績
・(高校推薦)桐光学園高校、桐蔭学園高校、日本大学藤沢高校、東海大学付属相模高校、横浜創英高校、川崎市立橘高校、日本大学高校(日吉)、多摩大学目黒高校、駒澤大学高等学校、日本大学第三高校、前橋育英高校(群馬)、浜松開誠館高校(静岡) ほか
・(Jユース)ジェフユナイテッド市原・千葉U-18 ほか
■ 入団情報・セレクション
・セレクション:毎年7月頃より日程を設定して実施
・体験会:あり(詳細は公式HP参照)
■ お問い合わせ・公式サイト
代表者:岩本 大輝
MAIL:info@club-teatro.com
公式サイト:クラブテアトロ公式サイト
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